私たちの行っている摂食嚥下療法 〜「歯科」だからできる摂食嚥下療法〜
生協王子歯科 歯科医師 藤村祥子
健康な人にとっては物を食べることは日常の当り前な行為ですが、食の楽しみというのは実は人生においてかなりのウエイトを占めるのではないでしょうか。
物を食べるという仕組みは反射と無意識の随意・不随意筋運動の連動です。
「食べる」という運動は
- 食べ物が目の前にある
- 食べ物を口に運ぶ
- 唇で食べ物を捕まえる・口の中に入れる・歯の上に食べ物をのせる
- 歯で飲み込みやすいくらい細かくする
- 同時に舌や粘膜で食べ物を味わう→「美味しい」
- 刺激でツバが出てくる→ツバを絡めて食べ物を飲み込みやすい形にする
- 舌で食べ物をのどの奥に運ぶ
- 反射的にのどの弁が閉じて食べ物が食道に運ばれる
「口から食べられない」という場合、この1〜8のどこに障害が起こっているのかが摂食嚥下障害の診断ポイントです。たとえば、
◇1・2の障害の場合: | 食べ物に対する認知力が低下しているか食欲自体が低下している可能性があります。 |
◇3の障害の場合 : | 唇や頬の力が低下している、あるいは支配している神経の麻痺などの可能性が考えられます。 |
◇4の障害の場合 : | 未治療歯や、咬合力の低下により咀嚼能力が落ちている可能性があります。 |
・・・と、全ての障害には理由があるのです。
この中で歯科の関われる範囲は3〜7と案外広範囲です。
一言で【筋肉】と言っても、「口を開ける」筋肉と「口を閉じる」筋肉と「笑う」筋肉は全て違います。
ですから「どこが機能していないのか」詳細に的確に診断する必要があります。
生協王子歯科では、障害となっている歯・咀嚼に関与する筋群・神経・唾液腺などを診断し、各患者さまごとに的を絞って治療計画を立て、機能回復に努めます。
機能していない部分をリハビリで回復させるというのは、手足も口も同じです。
また、歯や入れ歯がなければ口から充分に物が食べられず、全身状態を悪化させてしまいます。
物をうまく飲みこめずに食べ物や口の中の細菌が肺に入ってしまうと、抵抗力のない高齢者の方は誤嚥性肺炎を併発しやすくなり、ときには生命をも脅かします。
発音がうまくできなければ言葉が伝わらず、社会生活に障害が生じます。
私たちの摂食嚥下療法は、あくまで歯科らしく「歯科治療」を基本に「機能訓練」と「口腔ケア」の3本柱で患者さまの診療を行っています。